【十字架】クロスとクルシフィックス
通常、クロス(Cross)はイエスの像がついていない十字架、クルシフィックス(Crucifix)はイエス像がつけられている十字架を指す。
十字架の比喩的表現は新約聖書や初代教会の文章のあちこちに見られるが、十字架がキリスト教の象徴としては確立されたのは、5、6世紀になってからのことである。
十字架は聖書時代からのXP(キーロー)とともに、勝利のしるし、キリストの紋章、そして崇敬の対象であった。
十字架の使用は、キリスト教図像学的には、行列に用いられる場合、祭壇に置かれる場合、あるいは両方に用いられる場合があった。行列用十字架は313年コンスタンティヌスによるミラノ勅令よって許可されて以来、礼拝に用いられている。祭壇に置かれた十字架で最古のものは、6世紀のシリアにさかのぼる。
クルシフィックス
クルシフィックスは、半袖の貫頭衣(かんとうい)風の衣を着た生けるイエス像を起源とする。10世紀に入ると、人間の苦悩と受難を表現する半裸で苦しみのうちにあるイエス像、さらに十字架上に息絶えたイエス像が多数を占めるようになった。これらの十字架は祭壇(聖卓)に置かれるか、祭壇上の天井から吊り下げられている。
ペクトラルクロス
首に掛ける十字架(Pectoral Cross)は礼拝に必須の祭具ではないが、16世紀には司教(主教)が職務を行うときに胸の前に垂れるように掛けることが義務づけられるようになった。