↑礼拝堂
↑病院内で「病客」に挨拶するチャプレンの安倍勉さん
↑5つの個室を1つの共有スペースでつなげた五葉館
アマチュア建築家からの出発であったヴォーリズは、建築そのものをキリスト教精神の表現と捉えていた。建築設計は、依頼者とさまざまな専門性を持った技師たちの協力によってなされる総合的な営みと考え、建築家が持つ作家的個性の表現とは異なる建築活動を展開した。建物の風格はその外観よりもむしろ内部空間にあるというのが持論だった。
建物の意匠よりも建築空間の雰囲気を重要視したことは、この礼拝堂の窓の設計からも見てとれる。当時の日本において不治の病として恐れられていた結核。その薬がなかった時代、十分な日光を浴びることと、風通しが良い新鮮な空気を吸うことが療養には重要であった。そこで、ヴォーリズ記念病院(当時は近江療養院)の結核療養所の五葉館(1918年築)や礼拝堂(1937年築)の内部は、太陽が一日中射し込み、風が建物の中を通り抜ける空間となるように配置されている。
またヴォーリズは、光が人間の心に大きな影響を与える考え、常に建築空間の光を大切にした。「病客」がチャプレン、医者、看護師たちと一緒に過ごせるヴォーリズ記念病院には、「ケア(心遣い)とキュア(治療)」という神からの光の救いが満ちているのである。
(月刊誌『信徒の友』「聖なる光と祈りの空間」2014年12月号より)